2005年3月31日
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AERA
(No,16)
『あなたは堀江社長、好き?嫌い?』のアンケートに答える
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週刊誌「AERA」編集局より、ライブドアの堀江社長についてアンケートの依頼があり、下記のとおり回答しました。その一部は名前入りで、2005年3月28日発行の「AERA」P20~23に掲載されました。その全文を掲げます。
AERA「あなたは堀江社長が好きですか」アンケート
回答者
片桐 務(かたぎり つとむ)1950年1月2日、新潟県長岡市生まれ、55歳。
地域出版 夢工房代表、NPO法人自然塾丹沢ドン会専務理事・事務局長。神奈川県秦野市在住。
質問1(堀江氏が好きですか嫌いですか) 好き
堀江さんのノーネクタイ姿は、生き方の表われ。小生自身も、東京の出版社を辞め38歳で丹沢山麓で1人出版社を立ち上げた。冠婚葬祭以外はネクタイを締めないで仕事をしている。それが自覚的な生き方のスタイルであれば共感する。また、既存の権威や権力、社会の常識にとらわれずに物申したり、新しい事業を展開することは、非常な困難が伴うものだが、そこを軽々と自然体でやり通しているところにも好感が持てる。プロ野球の参入失敗もなんのその、果敢にチャレンジしている若者だという印象だ。多様な生き方が個性として認知される社会が当たり前で、ファッションもまた然り。腹の出具合が少々気になるが、それも多忙ゆえの運動不足として目を瞑ろう。
質問2(ニッポン放送をめぐる一連の動きを支持しますか、支持しませんか) 支持する
経済がグローバル化したこの地球社会の中で、旧態依然とした経営手法でIT社会を切り拓くことはできない。IT世代の申し子が海外の投資家の期待を背負って資金提供を受け、それを自らのビジネスチャンスに投資・挑戦するのが堀江さんという構図。法の枠内で現状の社会・経済に新しいビジネスを企てる姿は「ドンキホーテ」の勇姿にも似ている。当たって砕けろ、とはよく言う言葉だが、仮に砕けたところで、チャンスはまたある。くじけないで捲土重来を期せと、エールを送りたい。
質問3(堀江氏と一緒に働きたいですか、働きたくないですか) 一緒には働きたくない
彼が何を目指しているのか分からない。売り上げを拡大する、世界一の企業にすると言ったところで、それはマネーゲームの延長でしかない。TV・新聞などの情報産業とIT産業の融合・変革と言っても、彼にそれらを止揚する哲学があるとは思えないし、そのような言葉も聞かれない。その一方で、創業者利益、資産は青天井と言うのであれば、何をか言わんやである。見ている分にはかまわないが、一緒に働くことはご免こうむる。
質問4(堀江氏は日本を変えることが出来ると思いますか) 日本を変えることは出来ない
彼の目は澄んでいるが、遠くを見ていない。ITの知識と技術とビジネスチャンスを捕まえる決断力はあるが、日本の地域や社会には多くの人々が様々な職業に携わり多様な生活文化を持って暮らしているという大前提に思いが至っていない。同時代を生きる連帯感や社会に対する帰属意識は薄く、逆に自分の行動パターン以外の人たちに対しては感情を顕わにし、優しさに欠ける。これは自己に対する自信とは逆の彼の弱さかもしれない。
これまでの事業拡大のスピードは堀江さんの個性とパワーによるもの。社員や株主の利益を優先するということでは企業人としての優しさは伺える。「走れメロス」の主人公のように友や株主への忠誠は尽くす。しかし、だからと言って「ほりえもん」が日本の社会を変えるとは思わないし、勝手に変えてもらっても迷惑だ。どう日本を変えようかということは、一人ひとりのわれわれ市民による議論と合意が必要で、担い手はもちろん私たち市民だ。
ただ言えることは、日本の閉塞した現状がこのままではどうもまずいということを、ITと株という分かりやすい素材で白日のもとに晒し、IT人類と旧態依然人類の違いを際立たせてくれたことだ。「今の若い者は!」とは言わせないインパクトがあった。これだけ大騒ぎしているマスコミ報道も、いつの間にか「誰、ほりえもんって」とならないことを願う。
質問5(堀江氏にあったら何か言いたいことがありますか)
これからの日本の経済や社会は、相互に補完し合う企業経済とNPO経済があり、そこに政治や教育についての小さな政府が地域や国にあるという、トライアングルの社会構造でしかあり得ないと思う。690万人とも言われる団塊世代が定年を迎える2007年問題が取りざたされているが、単なる退職金目当ての企業経済の拡大だけがテーマでは日本の未来はお寒い。ITが社会や人々の幸福のためにどのように使われるか、そのために社会や経済の仕組みをどのように変え行くかという議論のうえに、IT産業もあり、企業経済もある。オープンなアダルトサイトがライブドアにあることが、プロ野球参入審査の最終段階で問題にされたが、この議論の中で堀江さんが何をなすべきかは明らかであると思うが、元の木闇でないことを願っている。
NPO経済とは、単なる営利目的ではない、非営利の活動がもたらす経済であり、暮らしの仕組みである。それは、大勢の市民が思いと時間と汗を提供しながら、地域や人々の暮らしに関わることが自らの癒しにもつながり、そのネットワークが点から線、さらに面へと広がることで地域や人々の暮らしや生活文化が豊かになることを意味する。
団塊世代の懐が単なるマネーゲームの標的や企業経済の餌食になるのではなく、自ら参画するNPO経済によって、人々の意識や社会を変革する文化運動を創造することが、小生を含めた団塊世代の果たすべきことであろうと思う。これまで団塊世代がなしてきた日本社会に対する数々のダメージや、その多くが会社人間であり続けた何もしないという世代というマイナスを払拭するチャンスであり、社会を変える大いなる可能性を秘めていると思う。
団塊ジュニア世代の先頭バッターである堀江さんも、その隊列に加わってもらいたい。せめて、NPO経済の存在の重要性にも気づき、その一端にも関わってもらいたいものだ。
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