2006年4月14日
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本づくりのプロの真価が問われる
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「かながわ自費出版の会」という神奈川在住の編集者の集まりがある。神奈川新聞社出版局を始め6社がそのメンバーで、夢工房の片桐もその一人である。この会の趣旨は、プロの編集者の本づくりへの熱意と技で書き手に寄り添い、良質・適正な本づくりを広め、自費出版文化の振興に寄与することである。年に1回、小田原の伊勢治書店本店で「かながわの本・ブックフェア」と「本づくりセミナー」を開いている。
2月4日、5日に開かれた第4回セミナーのメインタイトルは「本づくりを楽しむ」。まず、神奈川新聞社出版局のK部長が、「原稿の書き方」と題して話をした。長い記者生活の実践を通した資料集めや取材の方法、具体的な原稿書きのノウハウを分かりやすく自費出版の初心者向けに話してくれた。
その後を受けた私のテーマは、「自費出版の勘どころ―わくわく本づくり10のキーポイント―」。①そもそも自分の本を創りたいと思った動機は、②どのような本に仕上げたいのか、③誰に読んでもらいたいのか、④原稿の書き方のコツ、⑤誰に印刷・製本のハードを頼むのか、⑥それにかかる費用はどれくらいか、⑦本づくりに果たす編集者の役割とは、⑧校正のやり方、⑨装丁・デザインについて、⑩自費出版のその後で、と書き手の疑問に答えるために駆け足で1時間半ほど話した。
セミナーの参加者は、すでに原稿を書き終えていて、これからどこに印刷・製本を頼むかという人、原稿書きの途中で書きあぐんでいる人、自分の本を創りたいが、どのように始めたらよいか悩んでいる人、編集のプロに原稿を見てもらいたい人、とさまざまであった。2つのトークの後の自費出版相談会には真剣な自費出版の書き手の想いと眼差しが溢れていた。
自己表現の手段としての本づくりは、いま何回目かのブームである。大々的な新聞広告を打って書き手の歓心を集め、ひょっとして自分も優雅な印税生活が、とキャッチコピーで書き手を惑わす「詐欺まがい」の商法も出ている。「企画出版」「共同出版」「共創出版」と名こそ違え、新手の自費出版社が出す新聞広告は、もちろん消費者である書き手の負担であることを一瞬、忘れさせる絶妙なコピーである。とどのつまり、自費出版をしては見たけれど、さまざまな不満やトラブルが残るという、自費出版界にとっては由々しき状況が今ある。マスコミもこの業界の病巣にあえて触れようとしないのが一般的である。
このような中で、自費出版の御三家の一つとも言われた「碧天社」が倒産した。昨年の「出版レポート」に掲げられた年間新刊点数約7万5千点のおよそ24%が自費出版物だという日販書籍仕入れデータがある。単なる商品としての経済行為のみに傾いているかに見える大手自費出版社の倒産は、この業界の危うい現状を表わしている。他山の石として真摯に向き合い、一人1冊の自費出版の本づくりの原点に立ち返ることができるかどうか。本づくりのプロの編集者の真価が問われる。
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